40歳を過ぎたら大腸カメラ検査を

大腸カメラ写真

大腸内視鏡あるいは下部消化管内視鏡が正式名称です。構造はほぼ胃カメラと同様ですが、胃カメラよりもやや長く、またスムーズに大腸の奥まで挿入できるように、ファイバーの硬さが調節できるように工夫されています。肛門から内視鏡を挿入し、大腸の中を観察し、ポリープや腫瘍、炎症の有無などを確認します。ポリープを発見した場合、その場で切除します。がんや炎症などが疑われる場合には鉗子を使って一部を採取し、それを顕微鏡で調べる病理検査(生検)を行います。

大腸がんは、「腺腫」という良性ポリープから段階的に発生するという「多段階発癌」説があります。大腸がんの予防には小さな良性ポリープの間に切除してしまうのが最も有効であるとされています。しかし小さな良性ポリープはほとんど自覚症状がありません。そのため、何の症状もない方も40歳を過ぎたら一度大腸カメラによる検査を行うことをお勧めします。

大腸カメラによる検査を受けた方がよいとされる方

  • 健康診断等で行う便潜血検査にて「陽性」と判定された
  • 血便が出ている
  • 便秘異常(下痢・便秘)がみられる
  • 腹痛や腹部膨満感に悩まされている
  • 貧血の指摘を受けた
  • 顔色が悪いとよく言われる
  • 体重が急激に減少した
  • 親、兄弟姉妹に大腸がん、大腸ポリープを治療した方がいる など

大腸カメラの検査によって発見されやすい病気

  • 大腸がん
  • 大腸ポリープ
  • 大腸憩室
  • 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)
  • 大腸粘膜下腫瘍
  • 感染性腸炎
  • 虚血性腸炎 など

苦痛はできるだけ軽減します

大腸は2m程の長さがあり、お腹の中で折り畳まれて存在しています。まれに強い屈曲や腸に癒着がある場合、そこを通過する際に痛みが出ることがありますが、そのような方でも苦痛を感じずに検査を受けられるよう当院では鎮静剤や鎮痛剤を用いて検査を行っておりますので、ご安心下さい。

検査前の下剤は個室でゆったりと

大腸カメラの検査前は、下剤を飲んで便をすべて出しておく必要があります。当院では自分専用のトイレ完備の個室でリラックスしながら下剤を飲んで頂くことが可能です。Netflixで映画でも観てゆったりと過ごしながら、準備を行っていきます。

代表的な疾患について

大腸ポリープ〜大腸がん

大腸がんは欧米人によくみられておりましたが、近年は日本でも大腸がんが増えており、現在日本人女性のがんの死因の第1位です(男性は3位)。欧米化する食生活が発生に関係していると言われていますが、生まれ持った体質(遺伝子)の影響も強く関与していると言われています。
先にも説明しました通り、腺腫といわれる良性ポリープが長年の経過でがん化すると言われていますが、最近では正常な細胞の遺伝子が突然変異を起こして増殖する「de novo発癌」や、以前は安全と言われていた過形成ポリープががん化する経路なども報告されております。

大腸がんは進行すると、腹痛、血便、便通異常(下痢、便秘)、腹部膨満感などがみられますが、初期段階では自覚症状はほとんどありません。大腸がんの予防には、症状が出ない段階の小さな良性ポリープの間に切除してしまうのが最も有効であるとされています。そのため、何の症状もない方も40歳を過ぎたら一度大腸カメラによる検査を行うことをお勧めします。

治療は切除(内視鏡もしくは手術による)が基本になりますが、手術で取りきれない場合には、化学療法や放射線療法を行います。

大腸炎

大腸炎とは大腸が炎症を起こしている状態を言います。ウイルスや細菌などの病原体に感染(感染性大腸炎)、薬剤の影響、虚血性大腸炎(生活習慣病がきっかけの動脈硬化等による血流障害による炎症)など原因が特定している腸炎もあれば、免疫異常が原因の潰瘍性大腸炎、クローン病などの難病もあります。特に若い人では下記の潰瘍性大腸炎やクローン病が増加しています。

潰瘍性大腸炎

大腸及び小腸の粘膜に慢性の炎症または潰瘍をひきおこす原因不明の疾患の総称を「炎症性腸疾患」(Inflammatory Bowel Disease:IBD)といい、代表的疾患としてクローン病と潰瘍性大腸炎があります。
潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる疾患です。主に20〜30歳台の方に多くみられ、下痢や腹痛、体重減少、粘液の混じった血便などで発症します。炎症は慢性的なもので、良くなったり悪くなったりを繰り返していきます。またストレスは症状を悪化させる一因とも言われています。内視鏡検査で比較的容易に診断することが可能ですので、慢性的な下痢や腹痛が続いている方は、一度大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。治療は通常5-ASA製剤といわれる薬剤による治療から開始しますが、反応によってはステロイドや生物学的製剤などを用いることもあります。難病に分類されますが、近年新規薬剤が多く開発されており、治療の選択肢が格段に増えています。

クローン病

潰瘍性大腸炎と同じく原因不明の炎症性腸疾患で難病に指定されています。主に若年者にみられ、患者数は増加傾向にあります。口腔内〜肛門のどこでも潰瘍を起こし得ますが、小腸と大腸、特に小腸末端部に好発します。症状は腹痛や発熱、血便、体重減少などがみられますが、腸閉塞や穿孔などをきたす場合には手術が必要となります。また痔瘻を合併することがあるため、若い方で痔瘻を繰り返している方は、一度大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。

過敏性腸症候群

腹痛、下痢、便秘などの消化器症状があるものの、検査をしても病変などの異常がみられない状態を過敏性腸症候群と言います。発症原因はストレス、不安、緊張、あるいは過労といったものが自律神経の乱れにつながり、腸の運動に支障をきたして起きると言われています。20~40代の世代に起きやすいとされ、ストレスは症状をさらに悪化させます。

治療に関しては、まず日頃の生活を見直すことが大切です。例えば、ストレスが発生しやすい環境を改善するなどの対策が必要です。薬物治療では、症状の原因となっているセロトニンの作用を抑える薬や、下痢止め(下痢の症状がある方)、下剤(便秘の症状がある方)、整腸剤などを使用します。また抗うつ状態や抗精神薬などが有効な場合もあります。 現代のストレス社会では過敏性腸症候群の患者さまが増えています。お腹の不調が続いている方は一度大腸内視鏡検査を受けてみましょう。異常がなければ過敏性腸症候群の可能性が高いです。

大腸カメラ検査までの基本的な流れ

検査予約
当院のホームページのトップに、Web予約へのリンクが貼ってあります。検査日の4ヶ月前〜7日前まで予約できます。 予約された方は検査についての説明がありますので、7日前までに必ず一度受診してください。常用薬のある方はおくすり手帳をご持参ください。
検査前日まで
普段から便秘気味の方は、検査の3日前くらいから、消化の良い食事のみとしてください。検査前日は、事前にお渡しした検査食を摂っていただきます。21時以降は食事をしないでください。水やお茶についての制限はありません。また、前日就寝前に下剤を指示通りに服用してください。
検査当日は・・
食事はとらないでください。脱水予防のためコップ1〜2杯の水を摂ってください。お薬は、事前説明の通りに内服、または中止して下さい。糖尿病の薬は当日中止する必要があります。
検査当日は朝9:15に来院して頂きます。検査では鎮静剤を使用しますので、ご自身の運転(車、バイク、自転車 等)による来院は控えてください。

来院後は、約1〜2リットルの腸管洗浄液を時間をかけ、ゆっくり服用していきます。便の色が透明になったら、検査着に着替えて検査開始となります。検査時の流れは以下の通りです。

点滴
検査室に入る前に点滴をして、お薬を入れるルートを確保します。
検査室へ移動
移動できるベッド(ストレッチャー)に乗って横になったまま、検査室に移動します。
鎮静剤の投与、内視鏡の挿入
検査を行う直前に鎮静剤を投与していきます。これによって、うつらうつらした状態となり、苦痛を感じにくくしていきます。その後、内視鏡を挿入していきます。
大腸内腔を観察
内視鏡の内蔵カメラが捉えた映像はモニタを通して確認していきます。大腸ポリープを発見し、可能と医師が判断すれば、その場で切除します。がんや炎症などが疑われる組織があれば一部を採取し、病理検査に提出します。
検査終了
観察のみであれば10分程度、ポリープ切除した場合でも15~20分程度で終了します。

検査後の注意点

検査終了後はリカバリー室で30分ほど休み、麻酔の効果が切れたら元の個室に戻り、リラックスしていただきます。検査当日はできるだけ安静にしてください。検査当日は、ご自身での運転(車、バイク、自転車)は事故の原因となり得ますのでお控え下さい。ポリープを切除した場合、1週間程度は食事面(消化の良い食品にする、刺激物、アルコールは避ける)や生活面(激しいスポーツ、腹圧がかかる重労働、旅行 等)に制限があります。当日はシャワー浴にしていただきます。